九州大学情報基盤研究開発センター

民間利用成果報告書

利用課題名: リチウムイオン電池内の電極/電解液反応モデルの検討

企業名:トヨタバッテリー株式会社

代表者名:中桐 康司

所属部署:先行開発部 デジタル電極開発G

職位:グループ長

メール:yasushi_nakagiri@toyota-battery.com

連絡先:静岡県湖西市岡崎20番地,080-5820-6722

利用期間:2024/12/1 ~ 2025/3/31

利用成果 公開:即時公開

利用計画全体の概略

1)利用目的
車載用リチウムイオン二次電池において,電極/電解液での反応を把握するための計算手法を検討することが,今回スーパーコンピューティングシステムを利用する目的である。
具体的には,ESM-RISM法を用いてリチウムイオン電池の負極/電解液界面におけるLi脱溶媒和機構を解析するための計算を実施する。

2)利用意義
リチウムイオン電池内での電極/電解液での反応は非常に複雑でよくわかっておらず,これを把握するためには,計算科学の活用が有効である。

3)必要性
リチウムイオン電池内での電極/電解液の反応に関する計算を短期間で実施するためには,スーパーコンピューティングシステムの大規模な計算資源が必要となる。
特に,電解液の分解・反応メカニズムを解明するためには,化学反応を取り扱う必要があり,従来の古典分子動力学(MD)計算では化学反応を考慮できない。
更に電極/電解液の反応のダイナミクスを計算する場合,数千原子以上の大規模な計算モデルを構築する必要がある。
ESM-RISM法は,DFT計算と溶液理論を組み合わせることで,全ての原子を明示的に取り扱って計算するよりも計算負荷を低減することができる手法であるが,依然として計算コストが高い。
したがって,スーパーコンピューティングシステムによる超並列が必要となる。

成果の概要

1)具体的な成果
LiC6の(1-10)面(アームチェアー型終端)モデルに対してESM-RISM法を適用し,電解液溶媒分子として炭酸エチレン(EC),炭酸エチルメチル(EMC),炭酸ジメチル(DMC)を対象とし,EC/LiPF6,EMC/LiPF6,DMC/LiPF6を検討した。
いずれも1 mol/Lの塩濃度とし,Li脱溶媒和エネルギーを算出したところ,それぞれ0.46,0.36,0.33 eVとなり,ECのLi脱溶媒和エネルギーが最も高くなった。
また,EC/LiPF6電解液のLiPF6濃度を0~4 mol/Lまで変化させた場合の溶媒和エネルギー,脱溶媒和エネルギー変化を算出した。
その結果,脱溶媒和エネルギーはLiPF6濃度にかかわらずほぼ一定の約0.4~0.5 eVであったが,溶媒和エネルギーはLiPF6濃度が高くなるにつれて約1.3 eVから約0.4 eVまで減少した。
このことから,LiPF6濃度が低い場合,放電時にLiが負極から放出されにくくなり,負極近傍でLi濃度ムラが生じる可能性が示唆される。

2)社会・経済への波及効果
リチウムイオン電池内での電極/電解液界面の反応について,Li溶媒和/脱溶媒和エネルギー低減が電池性能向上に大きく影響する。
電解液中のLi溶媒種やLi塩濃度の違いによってLi溶媒和/脱溶媒和エネルギーがどのように変化するかという知見は,液系LiBの性能向上に向けて有益な情報となることが期待される。

利用アンケート

1)利用に関して有益であった事項
スーパーコンピューティングシステムがリニューアルされたことでハードウェアのスペックが向上し,計算速度が劇的に改善されたことが有益であった。
また,インストールされているソフトウェアのバージョンも新しくなっていたことも有益であった。

2)利用に関して生じた問題点
ノード間並列させて計算させた際,1ノード計算よりも計算速度が遅くなるなど,効率的なジョブ投入方法の検証に手間取った。

3)ユーザーサポートへの要望
ソフトウェア毎の効率的なノード間並列の実行スクリプト例やベンチマーク結果などを検証して公開して欲しい。

4)施設利用に関する感想・改善希望
特になし。

5)本事業で得られた成果や公表予定の成果
特になし。