九州大学情報基盤研究開発センター

民間利用成果報告書

利用課題名: ものつくりに(半導体材料)、ガラス材料)に適した第一原理計算の比較検討

企業名:住友電気工業株式会社

代表者名:井崎 学

所属部署:解析技術研究センター

職位:主席

メール:izaki-manabu@sei.co.jp

連絡先:070-7826-6413

利用期間:2024年11月1日~2025年3月31日

利用成果 公開:即時公開

利用計画全体の概略

1)利用目的
数値計算の観点から材料開発、プロセス開発をサポートするため

2)利用意義
最新のスパコンの利用による計算の速さと使いやすさ、また所望のソフトウェアがある点。

3)必要性
効率的な材料開発、プロセス開発には第一原理計算が必須である。

成果の概要

1)具体的な成果
ランタノイド元素は、「産業のビタミン」といわれ、ハイテク製品には必要不可欠である。
例えば高出力磁石に使われるネオジウム、ディスプレーの彩色を豊にするユウロピウムがあげられる[1]。
一方、計算機の進展により、第一原理計算を用いた、材料探索、材料改良が行われている。
ランタノイド元素を含有する系がその機能を発揮するには4f電子の関与が必要である。
これを第一原理計算として取り込むには4f電子を価電子として取り入れたポテンシャルが必須となる。
本研究では、Quantum ESPRESSO[2](QE)を用い、複数のランタノイド元素についてその窒化物の格子定数からそのポテンシャルの妥当性の評価を行った、格子定数の実験値は文献[3]を用いた。  
計算はLa、Ce、 Nd、Sm、Gd、Tb、Dy、Er、Luの窒化物について行った。
ポテンシャルは、4f電子をコアとして扱うQEの標準的 なポテンシャルと、ミネソタ大学で公開されている 4f電子を価電子として取り扱ったポテンシャルを使用した[4]。
後者のポテンシャルによる計算は文献[4]の状態密度を再現することをあらかじめ確認している。k-点メッシュは12x12x12、カットオフはそれぞれのポテンシャルで推奨されたものを利用した。
4fを価電子として扱うポテンシャルによる格子定数の計算結果はLa、Ce、Er、Luでは実験値と0.5%以内のずれに収まっているが、その他の元素では1%以上過少評価されている。
一方で4f電子をコアとして扱うポテンシャルによる計算ではCe、Luを除いて実験値と1%以内の差となっている。
これらの結果から、4f電子を価電子として扱うポテンシャルの利用にあたっては元素によって、そのまま使用できる可能性があるもの、なんらかの工夫(原子位置は4f電子をコアとするポテンシャルで計算し、電子状態は4fを価電子として扱うポテンシャルで計算する等)が必要であるものもあるとの結論が得られた。
また文献[3]によればVienna Ab initio Simulation Package (VASP)[5]による計算でも実験値を再現する格子定数が得られるとのことである。
我々も計算に取り組んでいるが、計算時間がQEに比して10倍以上かかる結果となっており、計算パラメータの再検討を要する結果であった。
参考文献
[1] Spellman, F. R. The Science of Rare Earth Elements: Concepts and Applications, 1st ed.; CRC Press: Boca Raton, 2022
[2] http://www.quantum-espresso.org.
[3] Kiersten Kneisel, et. al. ACS Omega 9 (2024) 47842−47847
[4] M. Topsakal, R.M. Wentzcovitch, Computational Materials Science 95 (2014) 263–270
[5] G. Kresse and J. Hafner, Phys. Rev. B 47 , 558 (1993); ibid. 49 , 14 251 (1994).

2)社会・経済への波及効果
4f電子を価電子として取り込んだポテンシャルはランタノイドを含む第一原理計算の殻となる部分である。
今回得られた、「4f電子を価電子として含む第一原理計算を正しく行うには元素ごとにその妥当性を把握し、必要に応じてポテンシャルのさらなる作りこみやその置き換えなどが必要」という結果は、
ランタノイドを含む系第一原理計算に必要不可欠な視点を与えたものを考えられる。

利用アンケート

1)利用に関して有益であった事項
上記の結果を得るため4f電子を価電子として取り扱うポテンシャルを使用できる計算環境が必要であった。
当時、玄界にインストールされていたQuantum ESPRESSOのバージョンでは動作ができない点をご相談したところ、すぐにご対応いただき、当時の最新版を使用できる環境を整えていただいた。
また、弊社が保有するVASPのインストールも許可いただき、玄界のリソースを有効に使用することができました。九州大学 情報システム部の方々には心より感謝いたします。

2)利用に関して生じた問題点
とくになし

3)ユーザーサポートへの要望
とくになし

4)施設利用に関する感想・改善希望
「1)利用に関して有益であった事項」に記載しましたように課題に迅速に対応いただき感謝しております。

5)本事業で得られた成果や公表予定の成果