九州大学 情報基盤研究開発センター 研究用計算機システムニュース No.420                                   2018.02.22

+--------------------------------------------------------------------------+ |1.講演会 | |「マテリアルインフォマティクスを有用な材料設計開発ツールとするために | | 必要な信頼性のあるデータベース構築法」のお知らせ | +--------------------------------------------------------------------------+ ----------------------------------------------------------------- 情報基盤研究開発センター研究用計算機システムWWWホームページ https://www.cc.kyushu-u.ac.jp/scp/ ----------------------------------------------------------------- 1.講演会「マテリアルインフォマティクスを有用な材料設計開発ツールとするために 必要な信頼性のあるデータベース構築法」のお知らせ 情報基盤研究開発センターでは以下のとおり講演会を開催します。 参加希望者は、 九州大学 情報システム部 情報基盤課 全国共同利用担当 E-mail: zenkoku-kyodo(at)iii.kyushu-u.ac.jp ※(at)は@に置き換え 宛に本記事末尾の書式を使用してお申し込みください。 * 当日の受付時間は開始時間の15分前からです。 * テキストは当センターで用意します。 * 開催中スタッフがイベントの模様を撮影します。写真は情報基盤研究開発センタ ーの広報物に掲載させて頂くことがありますので予めご了承下さい。 ■概要: この度、本センターでは、東北大学未来科学技術共同研究センターの川添良幸教授に よる表記の講演会を開催します。 この講演は、ディープラーニング技術を材料研究分野に応用するマテリアルインフォ マティクスに向けた、信頼性の高いデータベースを、理論的に確立した定式化に基づ くシミュレーション結果の蓄積により構築する手法を提案するものです。 材料研究分野だけでなく、データサイエンス分野の研究者にとっても、大変意義のあ る内容となっておりますので、ふるってご参加ください。 ■日時:2018年3月15日(木) 14時00分 ~ 15時30分 ■場所: 九州大学 情報基盤研究開発センター(伊都キャンパス) 2階 多目的教室 ■主催: 九州大学 情報基盤研究開発センター ■講演趣旨 最近のAI技術の進展により、多くの研究分野でそれをツールとして取り込んだ新しい 試みがなされています。特に、ゲームの世界では人間のチャンピオンを負かし、自動 運転の方が人間のドライバーより高度な安全性を担保し、株式市場では9割以上がロボ ットによる売り買いとなっています。これら人工物を対象としたディープラーニング 技法の適用は大成功を収めています。私たちの材料研究分野においても、MI(=Materi als Informatics、マテリアルインフォマティクス)がキーワードの一つとして浸透し つつあります。しかし、人工物を対象とした成功例とは本質的に異なり、材料研究で は直接自然物を相手とするため、「神のみぞ知る」部分が多く、人間の考えるディー プのレベルを遙かに超えた世界への挑戦となります。 世界的に材料データベース研究・構築・利用の膨大で長い歴史があります。私は1995 年からドイツ国Springer社のLandolt-Boernsteinシリーズの中の「アモルファス金属 に関する非平衡相図と物性」のデータベース構築と提供(最初は書籍、現在はネット ワーク提供データベース)に当たって来ました。既に3元系に関して4巻を刊行し、現 在4元系をまとめた3巻を準備中です。ここまでに既に20年以上の歳月が掛かっていま す。この経緯で、ドイツ国の編集者との共同作業から、データベースへの登録以前に 、データ自体を慎重に評価することが如何に重要であるかを経験しました。それは意 味のない、間違ったデータの集積は後に深刻な問題を引き起こすからです。残念なが ら我が国及びアジア地区にはデータベース構築に携わる研究者はほぼおらず、使うの みの状況です。従って、残念ながら構築時に学ぶ具体的な問題点を知らずに盲目的な 利用に留まっているのが実情です。 実験のみでMIが可能なビッグデータを構築することは、現在の複雑な原子構造の材料 を対象とした場合、時間的・経費的に極めて困難です。一方、ムーアの法則に従う計 算機パワーの進展は目覚ましく、実験の困難性解決のために、計算材料学の生み出す 数値結果のデータベース化とその活用による新材料設計技法の確立が望まれています 。現在、標準的に利用されている材料設計シミュレーション用ソフトウェアは、密度 汎関数理論(DFT, Density Functional Theory)に基づくもので、基底状態の理論を 使っています。その定式化の中で電子の交換相関相互作用汎関数は関数形が未定の部 分のため、実験に合わせる道具にしてしまう「現象論」が横行してしまいました。特 に、光反応等で重要なバンドギャップ値を算定するためはDFTより高度な電子の多体 相関を取り込んだGW近似等が必須なのですが、現在多くの研究者が現象論としてUと かαと呼ばれるパラメーターを適用して実験値に合わせています。(最初の局所密度 近似(=LDA, Local Density Approximation)は理論的に健全です。各準位の対称性は 実験と同じになりますが、バンドギャップ値が実験値の半分~2/3位に見積もられる ことが知られています。)これではバンドギャップ・エンジニアリングは不可能です 。何故なら理論的に確立した定式化とそれに基づく計算プログラムだけがエンジニア リングに活用出来るからで、現象論では既存の実験結果の説明は出来ても、未知の材 料の設計は不可能です。このレベルの理論計算に関しては、我々は10年以上前に、大 阪大学との共同研究でフッ化物を用いたVUV(Vacuum Ultra-Violet)レーザー材料設 計を行った経験があります。ペロブスカイト構造のフッ化物を周期律表の中の多くの 元素を対象としてLDAで算定し、実験家に可能性の高い材料を提案しました。その後、 実験的に合成され、工業化されています。 10年間に計算機パワーは100倍にも向上しました。この現状で我々の10年前の手法、 さらにはパラメーターフィッティングの現象論を適用した膨大な数値計算によるバン ドギャップ値算定は計算機の無駄遣いとしか言えません。我々独自開発のTOMBO(=T Ohoku Mixed-Basis Orbitals Ab initio program package)はGW近似を取り入れてい ます。さらに、全電子法なので、バンドギャップの様な相対的な物理量のみならず、 各準位の絶対値算定が可能です。この機能により、電子親和力やイオン化ポテンシャ ルの算定が可能で、その蓄積による大規模データベースは、実験値並(時には以上) の信頼性を担保出来ます(実験には常に不純物、欠陥、測定誤差があります)。 今後、MIが広がる以前に、重要なことは理論計算のレベルを確実に知ることです。 実験以前に、材料に要求される物理量をその値を算定可能な定式化とそれを実現した プログラムによって算定し、信頼性高い材料データベース構築を行い、それを活用し たMIを実行すべきなのです。 申込み: 以下の書式にご記入ください。 電子メールのタイトルは「講演会申込み」としてください。 --------------------------------------------------------------------- 情報基盤研究開発センター講演会申込書 (電子メール用) 講演会名:マテリアルインフォマティクスを有用な材料設計開発ツールとするために 必要な信頼性のあるデータベース構築法 氏名: 職名 (学生の方は学年): 組織名(学名/社名): 所属 (学生の方は研究室まで): 電話番号: E-mail: --------------------------------------------------------------------- ※本書式に記入された個人情報は講演会開催にかかる事務処理にのみ利用します。  ご不明な点等ございましたら、全国共同利用担当宛にご連絡ください。   Tel: 092-802-2683   E-mail: zenkoku-kyodo(at)iii.kyushu-u.ac.jp ※(at)は@に置き換え